渡辺税理士事務所　渡辺宏幸氏

今回の日本の会計人は、東京都調布市で"カウンセリングマインドを大切にする街場の税理士"として奮闘中の渡辺宏幸先生にお話を伺いました。渡辺先生は東京オリンピックが行われた１９６４年生まれの４４歳、今が旬の働き盛り。中小企業の管理者向け研修や地域の法人会・商工会のセミナーの講師を務めるなど活動の幅が広く、キャッシュフロー経営やオープンブックマネジメント導入のコンサルティングなども精力的に行っています。

インターネットや専門誌などで拝見しますと、ここ数年の先生の活躍には目を見張るものがあります。税理士業務だけでなく、いろんな分野で積極的に活動しておられ、去年から今年にかけて２年連続で本も出しておられます。事務所を開いて６年目だそうですが、絶好調ですね

ありがとうございます。そういわれると、ちょっと気恥ずかしいですね。実際は、友人たちの引きであちこちに顔を出しているだけで、メインはあくまで税理士としての仕事です。現に今でも収入の９０％は税理士業務から上がるものです。とにかく、私の場合は、ゼロからのスタートでした。事務所の立ち上げから１年ほどは、月商１０万円から１５万円という状態が続き、一時は真剣に勤務税理士にもどろうかと思ったくらいです。幸い、カミさんが仕事をしていたので、何とかもちこたえることができたというのが正直なところです。本当の闘いはこれからでしょうね。

メインだとおっしゃる税理士業務のなかで、現在、最も力を入れている分野は？

そうですね、強いて言えば法人税。お話をいただければ、相続もお引き受けしています。もちろん、私は「街場の税理士」ですから、ご要望があればどんな案件でも応じます。

「街場の税理士」って、なんか懐かしい表現ですね。ところで、その"街場"ですが、顧問先はどのエリアが多いんですか？

一番多いのは新宿、渋谷。東部では錦糸町。次に多摩地域の調布・府中・狛江ブロック。最近は立川や東大和周辺も増えていますね。東京都以外では神奈川県、埼玉県で数社、岐阜県で1社あります。全体で４０社ぐらいです。

ふだん仕事をするうえで大事にしていることがあったら教えてください

「カウンセリングマインドを持つ」ということですね。仕事に限らず、人と接する時は常にそれを心がけています。カウンセリングマインドというのは、もともとは心理学の用語で、専門家によって多少解釈に幅があるようですが、私は「クライアントの直面する悩みを相手の視点に立って解決しようとする気持、ないしは心構え」というふうに定義しています。
最初にこの言葉を教えてくれたのは、私が監事を務める社会福祉法人の施設長、保育園の園長先生でした。たまたま、その法人の理事の間でトラブルがあって、急きょ仲裁役に駆り出されたことがありました。私は保育の現場に関して素人ですから、当事者の先生方の言い分を各々の立場に立って聞くことぐらいしかできなかったのですが、何とかトラブルを収めることができました。そのやりとりを園長先生が見ていたらしく、後の理事会の場で「渡辺さんが面倒な役割を一生懸命やり遂げてくれた。みんなの言い分をカウンセリングマインドを持って丁寧に聞き取っていた。保育士たちにも見習わせたいくらいだ」と褒めていただきました。自分のしたことが評価されて嬉しく感じるとともに、胸に響くとてもいい言葉だと思いました。これは「イタダキ！」という感じでしたね。

先生はコンサルタントもしておられますが、カウンセリングとコンサルティングの違いは？

そうですね、ふだんあまり意識して区別していませんが、強いていえばコンサルティングは、明確な結果を導き出すための行動を示唆するもの。つまり、クライアントの行動に焦点を当て、一定の期間や時間内に何らかの答えを導き出すための助言やサポートですね。それに対し、カウンセリングは、心を癒すもので、いわゆる「答え」「正解」がなくてもいい。結果よりプロセスを重視するということですね。ですから、先ほどのカウンセリングマインドの定義に、敢えて補足するとすれば「今、目の前にいるクライアントに対し、複数の視点に立って全力でその人の望んでいることをくみ取り、全力でその望みをかなえる手助けをする。そのことに全神経を集中する気持や心構え、もしくはそのことに全神経を集中している状態」ということになるでしょうか。

将来のビジョンについてお聞かせください

まずは、税理士事務所としての力を強化したいですね。できれば１０年後ぐらいにピークをもっていければと思っています。と同時に、私自身の活動のフィールドを広げていきたいと考えています。いろんな分野の才能と提携してバックヤードを充実させ、「渡辺の事務所に行くと、なんかしらんけど、面白いよね」といわれるような一種のブランドのようなものを確立できるといいですね。