長先生は、ソフトバンクの孫正義さんの出身校として有名な久留米附設のご出身。そして一橋大学卒業と同時に米国系会計事務所アーサー・アンダーセン東京事務所に入社した実力派の公認会計士。こうした経歴だけをお聞きするとすごく堅物な先生を想像されるかもしれませんが、たいへん気さくな先生でお話しをしてみると笑いが絶えません。長先生曰く「大企業の監査を行うことよりも、経営者の身近な相談相手、親身なサポーターでありたい」といつもお話しされています。
神様じゃないですから、そんなスゴイことはわかりませんよ(笑)。ただ、私のお客様を見ていると、なるほどこういう人は成功しやすいのかなぁと言うのはありますね。そしてやはりのちに成功しています。
営業、商品開発、マーケティング、リーダーシップ、全てのことを含めた意味で「経営」が得意ということはもちろんですが、素直に人の意見をまず聞く。そして自分の考えを整理して判断する。こうしたことをきちんと行っている方は成功されていますね。
そこまでは言ってませんけど(笑)。私は税や会計以外のことについても色々な提案をさせていただいております。それはお客様である経営者の方に成功していただきたいからです。経営者にとっては、陳腐な意見かもしれません。しかし、少なくとも会計事務所の目から見た意見を述べているのです。経験的に言えば、まずそれを素直に受け止め、そしてご自身の判断で、今はこれをする、これはしないという判断をしてもらいたいと思います。
そうですね。新しいビジネス分野に進出し、急成長して非常に利益を上げている会社がありました。往々にしてそういう社長さんのところには「不動産を買いましょう、節税をしましょう」と言って金融機関などから色々な案件が持ち込まれがちです。最近では「M&Aなどで会社を買いましょう、不動産を買いましょう」という案件も持ち込まれます。
当時、私は「会社はますます成長しているときです。こういうときに節税しようと考えることは間違いです。会社が伸びているときは、どんどん会社に投資すべきです。」と進言しました。お金は生命保険や不動産に向けるのではなく、まず会社の成長のために投資するのがベストと考えたからです。そして「不動産などは銀行から借入することなく、キャッシュで簡単に買えるときがきますよ。商売が横ばいになっているときになってから買えばいいじゃないですか」とアドバイスをしました。
やはり税務署に払うよりは、不動産は担保にもなるし自社物件を持ちたいというような理由で節税を選択されました。たくさんの会社が、多少業績が良くなったところで借入金を活用して不動産を買ったりします。また、税金を払うのが嫌でリースや保険などにお金を使っている会社もあります。こういう事を見てもったいないなといつも思っています。アクセルを踏まなければならないときに、なぜかプレーキを踏んでしまう。税金を払わない限りキャッシュは増えませんし、会社は伸びません。
有名な本ですが『稲盛和夫の実学 経営と会計』(日本経済新聞社刊)を推薦したいと思います。キャッシュフロー経営という言葉を流行語にした本です。会計に関する本ですが、数字は一切でてきません。経営のための会計学といいますか、経営とその基となっている会計との関係を損益計算書や貸借対照表など、数字や図を一切使わずに、経営という側面から見た会計上の話を上手に説明している本です。
私はこの本を読んで、数字を使わずにここまで本質的な話ができるのかと大変感激しました。会計事務所がよく使う、内部統制やコンプライアンス、原価計算、情報開示といった難しい言葉を使わないで、素直に読んで納得させるという素晴らしい本です。経営と会計の結びつきをとことん考えた経営者である稲盛和夫さんだから書けた本ではないでしょうか。読んだときにとても衝撃を受けました。
あたりまえのことですが、ビジネスをやっていることを忘れないようにしています。最初に就職した会計事務所では会計監査、税務というサービスを売るのが「会計事務所の仕事」ということをまず教えられました。会計士試験に受かり、先生と呼ばれ、少し天狗になりかけていた自分には戒めの言葉としてハッとさせられました。
会計事務所として、お客様、ひいては世の中の役に立つサービス、たとえば、税務、会計、コンサルティングといったものを世の中に販売しているといるんだ。というプロ意識は大変重要だと思っています。「税理士だから、公認会計士だから世間的な常識がなくても仕方がない」ということではなく、一人のビジネスマンとして対応していきたいと思います。
目指しているのは、お客様の税・会計・財務の身近な相談相手として問題解決のお手伝いをすることです。お客様は色々な悩みをお持ちですが、まず身近な相談相手として会計事務所に相談されることが多いと思います。過去の起きたことに対して税法上、会計上の解釈を学者のように淡々と解説することは仕事ではありません。お客様はこれからどういうことをしたいのか、それは会計上、税務上、どういうふうに扱われるのか、ということをまず考えて回答し、あるいはこちらから質問し、提案していくことが大切だと思います。
繰り返しこちらから様々な提案をしていく中で、ビジネスセンスがあると認められ、はじめてお客様はこちらに色々なことを相談してくれるのではないかと思っています。お客様は常に前向きに将来に向かって活動されているわけです。単純に、過去行われたことを後処理する、帳簿につけ、税務申告をするということだけではお客様の役に立っているとは思いません。
そのためには、自分たちも税・会計・財務はもとより幅広い知識、『T字型の知識』が必要だと思います。深い縦の線に税・会計・財務、横の線に、銀行や社会保険、経済常識などの様々な知識を持つことが重要です。たとえば職員には、ファイナンシャルプランニングという資格をとるように強く勧めています。CFPの資格を取り、活躍している人たちもいます。もちろん、人の輪、つまり色々な方のネットワークも重要です。お客様の相談に対しては、自分たちで解決できる世界だけではなく、弁護士や司法書士の力で解決できるものも多いですから。
毎月一回土曜日に集まって集合教育を行っています。また、毎週月曜日の午前中は会議の後に研修を行っています。研修の教材は、税務通信という税法についての解説が掲載されている冊子や税務の教科書的な本を使って行っています。また、私が読んで「これは勉強になるな」と思う本については、職員に配り読んでもらっています。もちろん事務所外の研修会にも自主的に参加してもらっています。
実は、そううまくいっているわけでもないんですけどね(笑)。今、お話しした研修や教育は全て座学の世界です。実は座学だけでは身につかないこと、つまりオンザジョブトレーニングというか、実務の中で上司から教えてもらうことも大変重要なんです。ところが、私自身も含めて、上司も自分の本来の仕事をやりながら部下にアドバイスし、教育し、力を引き出すことによって育てていく、ということにあまり慣れていない。というより、そもそもそういう教育を受けたこともない。ですから、このへんは正直、試行錯誤しています。
人と同じことをしていたら人と同じにしかなれない。と職員にいつも言っています。世の中は進歩していますから、学ばなければならない新しい情報や知識もどんどん増えています。と言うことは、みなと同じ事だけやっていては、ついて行くのが精一杯、良くて平均、一歩間違えると、自分の価値はだんだん落ちてしまうということになります。もちろん人で成り立っている会計事務所の価値も同時に落ちていきます。上に上がっていくためには、人がやらないほどの勉強、経験、チャレンジをしていかなければなりません。これは会計事務所も企業も同じではないでしょうか。
積極的に前向きに頑張っている経営者は、常に挑戦者です。しかしなぜかチャレンジする経営者は、営業には強いが数字が絡む分野に弱い人が多い。私たちは、経営者の方々と同じ目線に立ち、経営上の課題を数字の面から厳しくご意見させて頂くことによって、お客様のお役に立ちたいと考えております。見たくない現実を見ることがつらいことであっても、現実を変えるためには勇気が必要です。
●事務所
長公認会計士・税理士事務所
●所長
長伸幸
●所属
日本公認会計士協会 北部九州会
九州北部税理士会 博多支部
●所在地
福岡県福岡市中央区天神3-4-5 ピエトロビル6F
●電話
092-731-4640
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